最近お仕事で、UIやUXのことをやっています。

「え?それってデザイナーがやる仕事じゃないの?」と思う人もいるかもしれません。これは僕の持論になるのですが、その考え方は半分合っていて、半分間違っていると思います。

と言うのも、プランナーというのはゲームの内容や演出、世界観を考えるだけではなく、「ゲームという体験を通して得られる全てに対して責任を持つ仕事」でもあるからです。

みなさんもたくさんのゲームをプレイしていて、UIメニューや操作が分かりづらい、不親切だと感じたことがあると思います。一体なんでそんなことが起きるのか?

端的に言えば「触る人のことを作り手の誰も考えていないから」です。プランナーも考えてない、デザイナーも考えていない。プログラマーも考えてない。もしくは考えられない。

とは言え動くものにしなければいけない。とりあえずで作る。
とりあえずで作ったものをユーザーが喜んで受け入れるケースはありません。

例えばソーシャルゲームなんかによくある、イベントだのガチャだののバナーがあります。これは作り手である僕たちにとって、「新しいイベントが始まったよ!遊んでね!」「新商品が出ました!ぜひこの機会にお買い求めください!」という”意思”が込められいるはずです。

何故なら、ゲームである以上はユーザーに楽しんでほしいと思うのは作り手として当然ですし、商品が売れてくれないと、サービスを継続することが出来なくなるからです。

それにも関わらず、全然目立たないところにバナーが置いてあったら、どうなるでしょうか?考えるまでもなく「それに気付かない人」が出てきてしまいます。ということは、イベントに参加してくれる人も減りますし、商品を買ってくれる人も減ります。

頭の良い人ならすぐ気付くと思いますが、そんなことをしてしまったら誰も得をしません。遊んでほしい、売れてほしいと思っているクリエイターは大損をしますし、ユーザーも楽しもうと思ってゲームの世界に来たのに、新しい要素に気付かないで「今日は面白くないな。」と思ってしまう。

なんでそんなことになってしまうのか。
作り手、届け手が未熟だと言ってしまえばそれまでですが、新人だろうが十年選手だろうが、プロとしてユーザー、プレイヤーからお金をいただいている以上は、言い訳はできません。

もっと言えば、今は誰でも今すぐゲームを無料で手に入れられる時代です。あまりゲームをしないユーザーですら、クオリティに対しての目が肥えています。

そうなればユーザーとしては分かりづらい物、不親切な物を嫌々やるよりも、他の会社のもっと分かりやすくて面白そうでワクワクするほうのゲームを選べば良い話です。作り手である僕たちにはどうにもならないということになってしまいます。それで良いのでしょうか?

ゲームというものは内容や世界観、本編の作り込み等の重要性も当然ながら、UIのような視覚的情報や触り心地も、本編以上に重要です。見た目がどんなに綺麗だとしても、誤操作連発しまくりのUIなんて、もはやゴミです。

それにも関わらずイケてないUIやUXが、特にスマートフォンのゲームに多いのには、いくつかの理由があります。とりあえず思いつく限り箇条書きにしておきます。

◆プランナーのやりがちなダメUI
・デザインのことはよく分からないから、とUIをデザイナーに丸任せにしてしまう
・デザイナーに「必要な物リスト」という形で、優先度や意味付けをしもせずに、「ただの一覧」で頼んでしまう
・色んな機能を後から後から追加し、足し引きも考えずに隙間にどんどん埋めてしまい、結果的に分かりづらくしてしまう
・使いづらいと最初は思っていたのに、何度も触っているうちにそれに慣れてしまった
・「仕様書を作る段階」で、熟慮、吟味をしなかった
・各画面にも本来ならば「コンセプト」があるはずなのに、それを定義しもせずに「仕様」「都合」で作ってしまった

◆デザイナーのやりがちなダメUI
・ただ派手にすれば良いと思ってる
・画面の収まりの気持ちよさにばかり目が行っている
・「お絵かき」と「UI」の分別がついていない
・視覚的情報にばかり関心が言って「実際触ったらどうか?」を自分で調べもしない
・プランナーに「重要なポイントやコンセプト」を聞きもしないで、自分の「ありもしないセンス」で自由にやろうとしてしまう
・自分としては違和感を感じているものの、プランナーからのオーダーをそのまま「社内下請け」みたいに、何も考えないで受け入れてしまう


大体こんなところでしょうか。イケてないUIのゲームは大体上記のどれか、または複数、なんなら全部をやってしまっています。僕は元々UIデザイナーだったこともあり、デザイナー、プランナー両方の目線でUIを意識しています。というよりも、プレイヤーとしての意識が一番重要なんだけど。だからこそ、こういった陥りがちな間違いをするデザイナー、プランナーが何を考えているかもよく分かります。

とは言え「UIはUI」です。ユーザーインターフェイス。要するに「ユーザー”の”インターフェイス」です。あなた達の私物ではありません。ユーザーが見て分かりやすいもの、触って気持ち良いものでなければ、もはやそれはユーザーインターフェイスではありません。上記のやりがち一覧に、ユーザー本位でやったと思える部分はあるでしょうか?一つも無いですよね。みんな自分の都合や気分で作っちゃってる。それじゃ「OT(俺たちの都合)」じゃん、全然UIじゃねーじゃん、と思うわけです。

僕個人の感想になりますが、いまだにスマホのゲーム、特に日本のソーシャルゲームでUIがイケていると思ったものは一つもありません。分かりづらい、ダサい、センスが無い。プランナーもデザイナーもUI、もといUXを舐めているとしか思えない。もはやなんとなく技術を持っているだけの人たちなので、クリエイターという名札は恥ずかしいからサッサとポケットに閉まってくれとすら思います。

スティーブ・ジョブズはiPodを作った時に、「どんな操作だったとしても、ユーザーに3回以上はさせるな」とデザイナーやエンジニアに指示したそうです。それは音楽を聴くという一人一人の「楽しい時間」「日常的な行動」に対して、複雑な操作や手間という「足かせ」は無意味、ストレスだということを本質的に分かっていたからです。理想として1回や2回も目指した可能性も考えられます。

実際にiPod shuffleはもはや画面すら無い。どの曲が流れるかも分からない。それでも「今日の気分じゃない音楽が流れたなら、曲を1つ遅ればいい。」と、極力シンプルなUI、UXを提供しています。

こういった本質を知らない、捕まえられていないプランナーやデザイナーがUIを仕事にすると、大体前述のリストのような「とりあえず動くもの」「俺たちの都合」になりがちです。

面白いゲームを考えるのが仕事だと思っている学生の皆さん、現役のクリエイターの皆さん、とにかくUIを舐めないでほしい。そこも本気で考えることができれば、ユーザーの感動や体験が何倍も素晴らしいものになるのだから。

ユーザーのことを本気で考えない限り、UIデザイナーを名乗るべきではないと思っています。

この双子を秘書にしたい。

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