こんばんは、寝ても覚めてもゲームのことばかりを考えているわけでもない、大久保です。(宇宙とか恐竜とかおっぱいとか、おっぱいとか)

今日はゲームプランナーの求人サイトとかによく書いてある、「歓迎スキル、必須スキル」について。 このスキルというのは業界でお仕事をする上で最終的には欠かせないものではありますが、当然人に寄って技術的な差であったり、アプローチの差異があったりするものなので、このぐらいまで出来てればOKというのは正直無いのかなと思っています。

例えば「エクセルを使える方」と書いてあったとして、どこらへんまでをエクセルが使える方とするのか、意外と曖昧だったりします。普通に文字や数字を入力するだけだったらアホでも出来ますし、触ったことが無くてもそんなのは一日で覚えられます。現役のゲームプランナーだって関数だのマクロだのVBAだのなんて、出来る人もいれば出来ない人もいます。

将来的にはそれなりに使いこなせる方が良いのは当たり前として、そういった「手を動かすだけの技術」は個人的には「必要になったら必死に覚える。ないし事前にちょっと覚えとく。」 ぐらいで良いのかなと思っています。(面接官にやる気無いと思われたらアレなので、堂々と「やったことありません!」とか言われるとちょっと論外ですが)

で、そんな要求スキルの中によくある「人と話すのが好きなかた」とか「円滑なコミュニケーションが出来るかた」 とか言うのが、エクセルなんかの技術よりも重要になってくるので、それを僕なりにお話できたらと思います。

自著でも書いていた気がしますが、ゲームプランナーという職業は他の職業に比べて、他人と話す機会がとても多いです。企画書の魅力を伝える場合は経営者なり出資者とお話をしなければなりませんし、仕様書の説明をするためにはデザイナーやプログラマー、サウンドの人とも話します。リリース直前ともなれば広報とかWebとか、コラボをやるんだったら他ゲーム会社の人とかとも話すわけです。

そう考えると、そもそもコミュ障ではゲームプランナーに向いてません。なので「話をするのが好き」 というのは元より、「色々な人と色々な話題が出来る必要」が出てきます。無論ゲーム業界に入ってすぐにそれだけのことをやることはありませんが、いずれにせよ必要な力になるのは変わりません。

で、じゃあ具体的にどういうコミュニケーションスキルがあれば必要充分なのか、というのを一応僕なりにまとめてみたので、もし少しでも参考になれば嬉しいなと思います。責任は持ちませんが。← 

1・自分から話かける
2・ちゃんとワクワクを伝える
3・相手を喜ばせる、相手の痛みが分かろうとする
4・大事なところでは遠慮しない
5・他人は他人だと言うことを正しく理解する


多分こんな感じかな、と思います。 

「1・自分から話しかける」
ゲームを作るということは、たくさんのスタッフと一緒にゲームを作ります。内容や規模によって様々ですが、10~20人と話すような機会もあります。みんなそれぞれがそれだけの個性だったり性格だったりするわけで、コミュニケーションベタな人だっています。特にお花畑系デザイナーとかギーク系プログラマーとか。中には廊下ですれ違った時に挨拶をしても、目を逸らすわ返事しねーわみたいなポンコツクソヤローもほんとにいます。個人的には挨拶もろくに出来ないような奴はゲーム業界を一秒でも早く追放したいぐらい嫌いなのですが、とは言えど同じチームのメンバーだったりする以上は、ないがしろに出来ないのも事実です。 

で、嫌いだったとしても「嫌い」というのはあくまで個人の感情なので、プロジェクトを円滑に進めるためには一切なんの関係もありません。そうなると、嫌いな奴ですらこちらから積極的に声をかけてしまうわけです。嫌いだったとしても、このプロジェクトを進めるために必要な知識や技術を持っているスペシャルな人なので、一定以上の尊敬はあるわけです、本来。プランナーとしては、仕事中に自分の性格を優先したところでろくなことは無いので、そう言った人達ともわざと積極的に話すことが出来るようになれば、チーム力がグッとアップすると思います。

「2・ちゃんとワクワクを伝える」
1にも関わることですが、「話す」というのは、単にこういう物を作ってください、と説明するだけのことを指しません。情報伝達という意味では当然説明も必要ですが、ゲームを作るというのはエンタメを作る=「ワクワクする感情を作る」ということです。そうなると、ここにボタンがあって、押すとhogehogeが表示されて、と説明するだけでは、ワクワク感はぜんぜん伝わりません。

「ここでボタンを押すとピコン!という音と共に、ホゲホゲがニュルンっと表示されて、ユーザーは「あ、分かり易いね」と思います。」と言うように、ユーザーから見て「どんな気持ちになるか?」を伝える必要があります。デザイナーやプログラマーもロボットではないので、「それを入れることで何が楽しいの?」「ユーザーはどういうふうに喜ぶの?」というのを知りたがっています。それが無い状態で説明をするのは、到底伝えてるとは言えません。

何がどう面白いのか、を伝えるために「何故(Why)」と「何故ならば(Because)」と必ず伝えられるようになりましょい。

「3・相手を喜ばせる、相手の痛みが分かろうとする」 
 今度は、ちょっとめんどいです。2のような伝え方が出来るようになっても、相手が変われば伝わり方が少し変わってしまう場合もあるということです。先ほども言ったように、ゲームを作る上では色々な人が関わります。役職も違ければ性格も違いますし、ベテランもいれば新人もいます。普段遊ぶゲームの好みだって違います。あまりゲームをしない人だっています。

そうなると、「こう言えば伝わるだろう」 と思っていたところで、全然伝わらないケースもあります。また、伝わったところで「いやー、それ面白くないっしょ」みたいなことを言ってくる人や、「内容は分かったけど、それを作る時間が無いよ」みたいなことを言う人もいます。

先ず一つに、「同じことでも言う相手によって言葉は変えた方が良い」 ということです。同じことでもデザイナーやプログラマーなどの職業によって大事にしているポイントも違いますし、リテラシーの差がある場合は伝わり方にも差が出ます。なんにせよ重要なのは「ユーザーがこう思うために、ここをこうするんです。」というのは変わりませんが、それをAさんに伝える場合はこう、Bさんに伝える場合はこう、という風に、「話している本人にちゃんと伝わる」という共通結果のためには、こういった小細工も必要だったりします。

ともあれ「バカでも分かる言葉をなるべく選ぶ」 というのが良いと思います。これは別に相手をバカにしているというわけではなく、その方が全員に伝わりやすいからです。スティーブ・ジョブズとかみたいな頭の良い人のプレゼンテーション等を見れば分かると思いますが、「なるべく簡単な言葉を使って、人の心を動かす」ということを心掛けています。賢い人ほどバカ向けの言葉を選ぶというのは、そういうことだと思います。

「4・大事なところでは遠慮しない」
1~3までで大まか大切なことはすべてだと思いますが、それだけでも駄目な時はあります。こちらの作りたい物は伝わった、ワクワク感も伝わった。それでも、「工数が足りないです。」とか「個人的には好みじゃないな。」とか言い出すようなクソみたいな輩もいます。 二言目には出来ない、やりたくない、みたいなことを言う奴は死んでしまえと思っていますが、本当に死なれたら全力で困るので、そんな諸々がありつつもこちらの意思をしっかり通す必要が出てきます。

工数が足りないというのなら、他の作業と照らし合わせて優先度を設定してあげればいいし、好みがどーのとか言い出したら、「今回はユーザーがこういう想定なので、こちらで行きます。」と言い切れば良いだけです。ここらへんになると不毛なケンカになるようなケースもありますが、プランナーである以上は遠慮してはいけません。相手がベテランであろうがワガママクソヤローだろうが、プランナーである以上は組織的には上位職となります。別に偉いとかそういうことではなく、ゲームを作る流れの中では上流工程であり、意思決定者であるということです。

ここで遠慮をしてしまうと、他の人の意見や文句で「作るものが歪んでしまう」ので、結果的に工数が膨らんだりクオリティが下がったり、チーム全体のモチベーションが下がったりしてしまいます。そうならないためにも、ここはちゃんとプランナーとして旗を振るべきだと思ったタイミングでは、相手が誰であろうと毅然とした態度で押す必要があります。そういう意味では「平和主義を装った事なかれ主義」な人は、ゲームプランナーには向いていないかなと思います。別にじゃんじゃんケンカしろという意味ではないですよ。念のため。

「5・他人は他人だと言うことを正しく理解する」
端的に言えば3で言ってることとあまり変わりません。ドライな意味での他人ではなく、「自分以外の人達がいるおかげで、ゲームを作れるんだよ。」というのをちゃんと理解しましょうという意味です。自分=プランナーという立場の時に、「なんでプログラマーの◯◯◯さんは理解してくれないんだろう?」みたいな出来事がままあります。そういうのが積み重なっていくと、「◯◯◯さんとはなるべく話さないようにしよう。」みたいになってきます。それでは「円滑なコミュニケーションとは真逆」です。

プログラマーの◯◯◯さんが自分を理解してくれないというのは、言い換えればアナタがプログラマーという職業なり特性を理解してないとも言えます。職業的なことだけではなく、その人本人を自分が理解しようとしていないという場合もあります。職業、性格、好み、大切にしていること、今日の気分、体調、みんな人間なのだから色々なことがあります。そういったたくさんのパラメータがある中で、一緒にゲームを作る仲間のテンションを上げるのは、プランナーの仕事だと思っています。

一人一人の個性を理解した上で、それぞれに合わせたモチベーション作りをコーディネートしてあげる、これが出来たらスーパープランナーなんじゃないんでしょうか。いずれにせよ上流工程=チームを引っ張る責任者なのがゲームプランナーなので、物理的なことだけではなく、チームメンバー全員の「心を引っ張れる存在」になれるように、ぜひ頑張って欲しいなと思います。

長文になりましたが、「円滑なコミュニケーションの出来るかた」という一言にはここらへんが詰まっているような気がします。いや、知らん。 おしまひ。