最近は昨日のことも忘れる勢いで、もはや以前も書いたんじゃねーか的なネタをまたやってる疑惑が。

今日はあんまり楽しくない、KPI(重要業績評価指標)について自分なりに適当に。以前からブログでもちょくちょく書いている通り、スマホの課金型ゲームをお仕事にする場合、何度となく「KPI」という言葉を職場で聞かされます。端的に言えばゲームの毎月の売上であったり、それを達成するための間接値(チュートリアル突破率とか継続率とかARPPUとか)のことを、まるっとKPIと言う場合が多いと思います。

最近の僕は色々なゲームのKPI値を分析して、より数字が上がるような施策を考えたり提案したりというお仕事もしていたりします。以前も書いたように、新人でもKPIという言葉を叩き込まれるような雰囲気がここ数年では当たり前となっているので、良い意味ではゲーム業界にも数字に対する理解のある人が増えているかなぁと思います。その反面「数字を知った気になっているだけの人。」「やっぱり数字が苦手な人。」も如実に浮かび上がっているとも言えます。 

僕も若い頃に上司に数字を叩きこまれた際に、当時はその本質を全然理解していませんでした。10万人のユーザーがいます。そのうち10%が課金しています。一人あたりの月平均単価は5千円です。今月の売上はいくらでしょうか?まぁ、5千万円ですよね。そんなの小学生でも分かりますよね。そこから人件費だの広告費だのキャリア決済だのを引いていくと、利益が残って利益率何%みたいな。

でも、↑ぐらいのことだったら1日もあれば覚えられるので、それ自体はあんまり意味が無いです。もう少し丁寧に言うと、「眼前に結果として出ている数字を読むだけ。」だったら誰でも出来るので、それだけでは無意味だと言うことです。たまーにそういうポンコツプロデューサーを見かけます。

KPIという言葉も便利なんだか不便なんだかいい加減なもので、人に寄って受け止め方が違います。

・絶対に達成しなければいけない数値指標
・↑で見たような結果速報値だと思っている人
・他タイトルと比較して、相対的にイケてるかイケてないかを推し量るための数字

当然上述のような要素も含んではいますが、どれも本質ではないと個人的には考えます。というのも、お仕事にしている場合は数字を結果として見るのではなく、「作る」必要があるからです。例えば、今からつくるゲームで毎月1億円の売上を立ててください、というミッションがあったとします。ここは会社からのお達しなので、クリエイターが勝手に変えることは出来ない、絶対的なルールとして決められます。

そうなると次に、「どうやって1億円を稼ぐか?」ということを考えなければいけません。上述のようなスマホの課金型ゲームであれば、「何人からいくらずつ貰って、合計1億円にするか?」という考え方になります。最後の帳尻さえ合えば、1千万円ずつを10人からでも、10円ずつを1千万人からでも、OKということになります。とは言え、ゲームの中で何を売れば、その数字が達成できるかは、いずれにせよ難しいことだと思います。

まだあまりそういった数字に触れたことの無い人にしてみたら、一人からいくら貰えるかを考えなさいと言われても、分からないと思います。かと言って「アイテムは多分100円ぐらいでー。ガチャは1回500円でー。」とテキトーにやったところで、それでは売上の見込みが立ちにくい、というよりか、上司に根拠を求められた時に、まともな返答が出来ないかと思います。

どうすればそこらへんの数値の感覚が身につくか?と聞かれたら、個人的な経験上では残念ながらたくさんのサンプルを見るしか無いのかなと思います。僕は多分20~30本ぐらいのゲームの数字を見てきたので、こういう場合はこう、昔はこうだったけど、今はこう、みたいなのがようやく「ただなんとなくあるだけ。」の状態です。そういう意味ではソーシャルゲームを1~2本しか運営していない会社の場合、サンプル量が足りないで結果的に苦労される場合も多いかと思います。

いずれにしても、一応覚えておいて損は無いのと、今後ゲーム業界でゲームプランナーをやる場合に、「このKPIを伸ばすためには、こういうゲームシステムを入れましょう!」みたいなシチュエーションが本当に多いと思うので、順を追って身に付けるといいと思いますよ!順番で言うとこんな感じでしょうか。

1・知る / 先ずは何も知らないと思うので単語なり意味を覚える。ついでに言うと苦手意識をここで捨てちゃう
2・覚える / それぞれがどういう因果関係で、ユーザーの動向と連動しているかを理解する
3・試す / 新しいシステムなり、ゲームバランスなりを調整してみて、数字がどう動くかを体感する
4・考える / 伸ばしたいKPIに対し、どんな施策を打てば上がるかをゲームデザインとして考える
5・作る /  自分が狙った通りのKPI値を作れるような全体的なゲームデザインを設計する
6・忘れる / 1~5が当たり前にできるようになったら、意識せずに勝手にイメージできるようになる


こんな感じでしょうか。最近ではガンホーの森下さんやモンストの岡本さんが「KPIは意識しません」とか言っていますが、アレは半分ウソで半分本当だと思います。上述の1~5を経ていると、一々細かい数字なんか見ずに、「単純に ”面白い”にだけ注力していれば、勝手に数字は上がる」という理屈から、そう仰っているんだと思います。

で、数字を当たり前にやるようになっても、絶対に分からないことがあります。簡単に言うと「実際にそのゲームを遊んでみないと、数字の意味が完璧には分からない。」という点です。 先ほども述べたように、僕は色んなゲームの色んな数字を見ます。過去の各種KPI値がダーッと並んだエクセルとかを見るわけです。でも、それを見ただけではどんなゲームかとか、ユーザーさんがどこに熱中しているゲームかなんて分かるわけがありません。せいぜい「チュートリアル突破率がゴミだな!」とか「ARPPUが悶絶アレだな!」とか、他コンテンツとの比較値が認識できる程度です。そういう場合もやっぱり「原因となっている事象」については、ゲームそのものを遊んでみないことには究明できません。

なので、数字分析というと頭良さそう、つまらなそう、地味そうみたいな色んなイメージがあるかと思いますが、僕の場合は「一回本気でそのゲームをめちゃくちゃ遊ぶ」ようにしています。もうユーザーに入り混じってガチ課金して、ランキング上位常連とか目指します。以前、自分が担当していたゲームでランキングイベントの一位を取ってしまったこともあります(ほんとはダメ)。その時は寝ている時間以外はひたすら画面を叩いていました。そうやって一回ガチでゲームを遊ぶことで、数値とゲームプレイの両側面から、ようやく色々なヒントや答えが浮かび上がってきます。

今のゲーム業界、意外とこれやらない人が多い。仕事で忙しいのかゲームが元々好きじゃないのか、エクセルいじるのが好きなのか知りませんが。いずれにしても自分がやっているサービスを自分自身が熱中して遊べていない時点で、数字についても中途半端にしか理解していない可能性が高い=ユーザーのことも全然見てない=KPI改善や売上の計画も立てられない、となります。(ゲームが好きじゃないならとっととやめちまぇ!)

ものすごい長くなってしまいましたが、「数字を勉強するなら、同じかそれ以上にゲームも本気で遊ぼう。」というお話しでした。またねー!(・ω<)bドュクシーッ

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