ゲームのお仕事をしていると、同じ会社の別チームだったり、他の会社の発売前のゲームだったり、色々なタイミングで「他人のゲーム」を話題にする機会があります。

そんな中で、時に「あのゲームは売れないな。」とか「なんでああいう面白いゲームをうちの会社でも作らないんだろう。」なんてことを好き勝手に思うこともあったりします。

悲しいかなゲームのお仕事をしていると、自分が好きなゲームばかりを作れるわけではありません。そうなると人によっては、やりたくもないジャンルや世界観だったりすると露骨にテンションが下がり、当人のパフォーマンスも全然出ない=じわじわと駄作としての完成に向けて時間を消費しているだけ、なんてこともあったりします。

僕個人としてはどんなゲームの担当になったとしても「絶対面白いものにしてやる!」と意気込んでやっているので、世間が認めるかどうかは置いといて、手抜きでゲームを作った記憶は一度もありません。 (多分)

そんな僕でもゲーム開発をスタートしてから完成するまでの間に、不安になる瞬間がちょっとだけあります。ゲームのお仕事では「α版、デモ版、モック」などと言われる、ゲームの一番面白い部分だけをかいつまんだ物を作ることがあります。それを使って「こんなゲームを作りましょう!」というのを分かりやすく説明することが目的です。

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ちょうど最近、とあるゲームのデモ版を制作中です。数ヶ月前にゲームのコンセプトや完成度の基準についてはキッチリと定義しました。それから現在、今のところ完成形のイメージにはほど遠いようなクオリティです。

ゲームというものは「ただボタンを押して動けば良い」という物ではありません。操作感であったり演出であったり、色味であったりキャラクターの個性、そしてゲームバランスであったり。「あらゆるエンタメ的要素が複合的に絡み合って」、ようやく面白くなってきます。また、その面白さというものもゲームによって大きく定義が変わってきます。

美少女ゲームだって言ってるのに、女の子のクオリティが同人以下のクソみたいな絵だったら誰も遊んでくれないだろうし、アクションゲームなのにテンポが悪かったら、もはやゲームですらありません。RPGなんてパラメータが命なんだから、演出以上に気を付けないといけないのはレベルデザインだったりします。

で、何が言いたいかと言うと、作る前の段階から「完成形を強くイメージする。」というのがゲームプランナーにとって重要なスキルであるのは当然として、実際に制作の段階に入った時に、「どういう順番で作っていくことがベストか?」ということを、常に考えながら現場に指示をしっかりと出していかなければならないという点です。

自著でも書いたような気がしますが、同じゲームを作る場合でも、プロデューサーやディレクターによって「作る順番」は大きく変わってきます。今から作るゲームは世の中に一つしか無い=決められた制作ルールや手順が無いからです。ビジュアルや演出を優先すべきか、ゲームのアクション部分を優先すべきか、基盤となる裏側のシステム開発を優先すべきか。 その時々の判断で、リアルタイムに細かい順番が入れ替わったりもします。(それがかなり苦手な人もいますが)

そんな中でも絶対にブレてはいけないのが、「完成形のイメージに近づくためには、今何をすべきか?」という点です。ここが迷いながら開発をしてしまうと、完成がどんどん遠のいていきます。そしてそれと同じぐらい大事なことが「最後の最後はこれでもかとしつこく細かい部分を調整すること」です。

「予定してた要素はすべて入れたはずなのに全然イケてない。」 という状態が通過点として、ゲーム制作には必ずあります。まだ細かい調整を何もしていないからです。逆に言えば、100でも200でもしつこくアニメーションのタイミングやボタンの操作感、キャラクターや背景の色味を詰めていくだけで、まるで別物のようなクオリティになるのもゲームです。要素を入れただけで満足するのは同人か趣味制作であって、ここがプロとしてゲームを作る上での大きな違いになります。(最近ではインディーズでもクオリティの高いゲームもたくさんありますが。)

この「要素を入れただけの段階」のものを額面通りに見てしまうと、クオリティが全然低いように見えてしまいますが、それを見たまんま感想を言うような人はプロではありません。ここから生まれ変わったかのようにゲームが変わっていく、変えていくことが、ゲームを完成させるためにはとても大切なことです。

そういうことを分かっていれば、例え不安な状況でも「イケるかイケないかは、まだ分からない。言い換えれば自分たち次第でいくらでも変えていける。」と思えますし、そういったマインドこそがゲームプランナーにとって一番大切な力かもしれません。

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写真素材:欣欣さん