今日はゲームを作る上で重要になる、ストーリーについて少し。しかしいわゆるRPGなんかのストーリーではなく、「ユーザーストーリー」についてです。例えばスマホのソーシャルゲームなんかをやっていると、お客さんに喜んでほしいというのは当たり前として、「どうやってお客さんに喜んでもらうか?」ということが重要になります。
ゲームをダウンロードして、起動して、タイトル画面が出て、チュートリアルがあって、本編があって。ユーザーはゲームを順番に遊んでいきます。そうなると、初めてのゲームだった場合「ん、これは一体なんだろう?」とか、「これはどういう意味があるんだろう?」とか、色々と”カベ”にぶつかるわけです。それが「良いカベ」だったらいいんですが「悪いカベ」もいっぱいあるわけです。ゲームのルールが難しいとか、UI(ユーザーインターフェイス)が不親切とか、課金しないと全然楽しめないようになってる、とか。
で、さっきの「どうやって喜んでもらうか?」という考えから見れば、意味も無いところでユーザーにストレスを感じてもらいたくはないわけです。そういった良くない部分は”KPI”という形で数字の情報として必ず現れます。例えばチュートリアルが不親切だったり、ゲームの面白さが十分に伝わらなければ、「チュートリアル突破率」というKPIの値が悪い数値として出ます。ゲームを開始した人が100人で、チュートリアルを突破した人が10人だったら、多分そのゲームはイケてないことになります。仮にその先にどんな面白い要素が待っていたとしても。
で、運営型のゲームを作っていると、そういったことが他のシーンでも何回も訪れるわけです。そんな時に僕はそれを「ユーザー帯」に分けて考えます。例えば今日1万人のユーザーが遊んでいたとしても、全員同じ遊び方はしていないわけです。まだ今日始めたばかりの人もいれば、何ヶ月も熱中している人もいるわけですから。僕はそれを大体ざっくりと↓のように一回分けます。
1・初心者…ほんとに今日始めたばっかの人。ルールも魅力もまだ分かってない。
2・初級者…ゲームの遊び方や大まかな世界観は理解した人。でもまだ面白いかは人によって違う。
3・中級者…ゲームを楽しいと感じてくれた人。課金するかしないかはまだ判断しかねる。
4・上級者A…ゲームに魅力を感じ、少しなら課金もして良いと考えている人。
5・上級者B…ゲームに魅力を感じ、定期的に課金もして良いと考えている人。
6・上級者C…ゲームに魅力を感じ、かなり課金して、ゲーム全体を楽しみたい人。
7・上級者D…ゲームに魅力を感じて長期的に楽しんではいるが、課金はしない人。
上記だけでも7つのグループに分かれます。同じ日に1~7に該当する人たちがたくさんゲームをプレイしていたとして、それぞれが違う目的で遊んでいるわけです。目的がある、ということは、その目的の達成に向けて遊んでいる。逆を言えば、目的が達成できない、または目的が無い場合は遊ばないわけです。
目的の達成うんぬんについては、「レベルデザイン」という形で、簡単には手が届かない、でも不条理ではないぐらいの絶妙なバランスを提供することで、ユーザーはそれを「やりがい」や「手応え」として体験してくれるわけですが、「目的が無い」は、かなりマズイわけです。
端的に言えば「大魔王を倒してしまった世界」だったら、もうそのRPGを遊ぶ理由は無いはずです。それに近いような感覚がソーシャルゲームにおいても実はあるんですね、「ユーザーそれぞれ」に。それではダメなので、作り手としては「次のストーリー」をちゃんと用意しなければならない。しかも一種類ではなくて、前述の1~7に該当するすべてのユーザー達に向けてです。
ゲームを運営していると、「もうそろそろ次の上位レアリティでも作ろうか?」なんて話が出ます。しかし、そのアイディアはさっきの1~7の全員が楽しいものでしょうか?違いますね。上位レアリティ=上級者向けです。しかも課金前提だとしたら、6のガチ課金者向けの施策ということになります。それ自体は売り上げを作るための計画の一旦なので否定することはありませんが、1~6に至るまでの流れの中で途中にブツッと物語が切れている部分があったとしたら、その効果は半減します。
要するに、前述の1~6に至るまでには、ユーザーがゲームに魅力を感じてくれて、もっと遊びたい、ずっと遊びたいと思うための「心のストーリー導線」が必要になるわけです。それをすっ飛ばして奥座敷を綺羅びやかにしたところで、ユーザーのほとんどはその部屋があること自体知らずに、その建物を出てしまうわけです。
とかくゲームを作る側がハマりやすい点として、「個人のプレイスタイルだけで物を考えがち」「物事を”要素”で捉えがち」というのがあります。この二つの考えで物を作ると視野が狭くなり、実際はユーザーがぜんぜん求めていないようなものを提供してしまうことにもなりかねません。
そんなことにならないように気をつけたいのは、「ユーザー一人一人 (1~7)のストーリーをちゃんと考えて、ゲーム内容や、UI、レベルデザインなどの全ての要素は、それに合わせた形で作るようにする。」ということです。これが出来ないと今どきのゲームプランナーとしてはイマイチなのかもしれません。ていうか、昔のファミコンとかでもそういう基本形はちゃんと入ってるし、学ぶべきことがいっぱい詰まっているような気がします。真面目な文章書いちゃったので腹筋します。