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Lv.30 ストーリーを考える。



凝りもせずにしつこく更新。

今日はゲームを作る上で重要になる、ストーリーについて少し。しかしいわゆるRPGなんかのストーリーではなく、「ユーザーストーリー」についてです。例えばスマホのソーシャルゲームなんかをやっていると、お客さんに喜んでほしいというのは当たり前として、「どうやってお客さんに喜んでもらうか?」ということが重要になります。

ゲームをダウンロードして、起動して、タイトル画面が出て、チュートリアルがあって、本編があって。ユーザーはゲームを順番に遊んでいきます。そうなると、初めてのゲームだった場合「ん、これは一体なんだろう?」とか、「これはどういう意味があるんだろう?」とか、色々と”カベ”にぶつかるわけです。それが「良いカベ」だったらいいんですが「悪いカベ」もいっぱいあるわけです。ゲームのルールが難しいとか、UI(ユーザーインターフェイス)が不親切とか、課金しないと全然楽しめないようになってる、とか。

で、さっきの「どうやって喜んでもらうか?」という考えから見れば、意味も無いところでユーザーにストレスを感じてもらいたくはないわけです。そういった良くない部分は”KPI”という形で数字の情報として必ず現れます。例えばチュートリアルが不親切だったり、ゲームの面白さが十分に伝わらなければ、「チュートリアル突破率」というKPIの値が悪い数値として出ます。ゲームを開始した人が100人で、チュートリアルを突破した人が10人だったら、多分そのゲームはイケてないことになります。仮にその先にどんな面白い要素が待っていたとしても。

で、運営型のゲームを作っていると、そういったことが他のシーンでも何回も訪れるわけです。そんな時に僕はそれを「ユーザー帯」に分けて考えます。例えば今日1万人のユーザーが遊んでいたとしても、全員同じ遊び方はしていないわけです。まだ今日始めたばかりの人もいれば、何ヶ月も熱中している人もいるわけですから。僕はそれを大体ざっくりと↓のように一回分けます。

1・初心者…ほんとに今日始めたばっかの人。ルールも魅力もまだ分かってない。
2・初級者…ゲームの遊び方や大まかな世界観は理解した人。でもまだ面白いかは人によって違う。
3・中級者…ゲームを楽しいと感じてくれた人。課金するかしないかはまだ判断しかねる。
4・上級者A…ゲームに魅力を感じ、少しなら課金もして良いと考えている人。
5・上級者B…ゲームに魅力を感じ、定期的に課金もして良いと考えている人。
6・上級者C…ゲームに魅力を感じ、かなり課金して、ゲーム全体を楽しみたい人。
7・上級者D…ゲームに魅力を感じて長期的に楽しんではいるが、課金はしない人。


上記だけでも7つのグループに分かれます。同じ日に1~7に該当する人たちがたくさんゲームをプレイしていたとして、それぞれが違う目的で遊んでいるわけです。目的がある、ということは、その目的の達成に向けて遊んでいる。逆を言えば、目的が達成できない、または目的が無い場合は遊ばないわけです。

目的の達成うんぬんについては、「レベルデザイン」という形で、簡単には手が届かない、でも不条理ではないぐらいの絶妙なバランスを提供することで、ユーザーはそれを「やりがい」や「手応え」として体験してくれるわけですが、「目的が無い」は、かなりマズイわけです。

端的に言えば「大魔王を倒してしまった世界」だったら、もうそのRPGを遊ぶ理由は無いはずです。それに近いような感覚がソーシャルゲームにおいても実はあるんですね、「ユーザーそれぞれ」に。それではダメなので、作り手としては「次のストーリー」をちゃんと用意しなければならない。しかも一種類ではなくて、前述の1~7に該当するすべてのユーザー達に向けてです。

ゲームを運営していると、「もうそろそろ次の上位レアリティでも作ろうか?」なんて話が出ます。しかし、そのアイディアはさっきの1~7の全員が楽しいものでしょうか?違いますね。上位レアリティ=上級者向けです。しかも課金前提だとしたら、6のガチ課金者向けの施策ということになります。それ自体は売り上げを作るための計画の一旦なので否定することはありませんが、1~6に至るまでの流れの中で途中にブツッと物語が切れている部分があったとしたら、その効果は半減します。

要するに、前述の1~6に至るまでには、ユーザーがゲームに魅力を感じてくれて、もっと遊びたい、ずっと遊びたいと思うための「心のストーリー導線」が必要になるわけです。それをすっ飛ばして奥座敷を綺羅びやかにしたところで、ユーザーのほとんどはその部屋があること自体知らずに、その建物を出てしまうわけです。

とかくゲームを作る側がハマりやすい点として、「個人のプレイスタイルだけで物を考えがち」「物事を”要素”で捉えがち」というのがあります。この二つの考えで物を作ると視野が狭くなり、実際はユーザーがぜんぜん求めていないようなものを提供してしまうことにもなりかねません。

そんなことにならないように気をつけたいのは、「ユーザー一人一人 (1~7)のストーリーをちゃんと考えて、ゲーム内容や、UI、レベルデザインなどの全ての要素は、それに合わせた形で作るようにする。」ということです。これが出来ないと今どきのゲームプランナーとしてはイマイチなのかもしれません。ていうか、昔のファミコンとかでもそういう基本形はちゃんと入ってるし、学ぶべきことがいっぱい詰まっているような気がします。真面目な文章書いちゃったので腹筋します。

Lv.15 たまにはKPIとか



今回はソーシャルゲーム等を運用する際に必要になってくる「KPI」について、好き勝手に書きたいと思います。

これからゲーム業界を目指すかた向けに説明すると、ソシャゲをプレイしている時に裏側で取得される、様々なパラメータのことを言います。今日は何人遊んでくれたとか、何人が課金してくれたとか、大体平均何日ぐらいでユーザーが飽きてしまうとか。そういった様々なユーザーの動向を色々な値で取得、分析することで、どうすればもっと数値が改善されるのか、売上に繋がるのか、次のアップデートやイベントはどんなものにするべきかなどの指標とすることができます。

実にたくさんの分析値があるのですが、その中でも特に個人的に重要視している物だけをテケトーに紹介したいと思います。また、昨今色々な会社さんで気にされてる数値でも、個人的にはどうでも良いと思っている値についても言いたいなと思います。

継続率
プレイヤーがゲームを初めてプレイしてから、何日ぐらい継続して楽しんでくれているかを指します。 例えば今日100人が登録して、7日後には20人しかプレイしていなかったら、「7日後継続率20%」となります。ただ、この継続率というのは会社によって計算のしかたがマチマチなので、一見あっちの会社からは物凄く良い数字が聞こえてきたりなんてこともあったりして、比較参考としてはアテにならないなと個人的には思っています。3パターンぐらい紹介。

1・登録日からたまたま7日後にログインしていた人の割合
2・登録 日から連続で7日間ログインしていた人の割合
3・継続率ではなく、残存率で見る場合

1は先に説明した、一般的に継続率と言うと一番多いパターンかもしれません。初日にゲームをプレイして、たまたま何日目かにログインできなかった。でも7日目にはまたログインしていた。こういう場合は1です。2は、ゲーム初日から「毎日続けてログインしてくれたユーザーの割合」です。当然ながら1よりも低い数値が出来るケースがあります。低いから悪いということはなく、「いかに熱中してくれているか?」を図るという意味では、2の方が断然良いような気もします。3は、1とか2を逆の視点から見てるだけですが、「平均x%のユーザーが残ってくれる。」と見るよりも「平均x%のユーザーが脱落してしまう。」と見たほうが、何故脱落しているのかという観点で改善施策を考えられそうなので、個人的には3が良いと思っています。

また、説明では7日間でお話していますが、個人的には「前月残存率」「前々月残存率」というように、ユーザーを二ヶ月ぐらいのタームで見るようにしています。と言うのも、継続率なんてものはキャンペーンをやったり広告をかけたりすることで、平気で上下動する頼りない数字だからです。それらを解決するためにFQ5とか言う数字の見方もありますが、僕は面倒なので見ません。一週間プレイしてくれた、やったー!とぬか喜びをするよりも、二ヶ月三ヶ月と長期にゲームを楽しんでくれるユーザーを増やすためにどうするか、をちゃんと考えて、その中にゲーム開始当日や3日後、7日後までモチベーションが維持できる状態を逆算して作っていくというのが本来のような気がします。いや、知らんけど。

課金率
ゲームをプレイしてくれているユーザーの中で何%の人が課金してくれているかを表します。100人がプレイしていて、5人が課金してくれている場合は5%となります。一日単位で見る場合もあれば、月単位で見る場合もあります。概ねどこの会社でも重要視する傾向がありますが、この値も広告やキャンペーン等でたくさんの人が一度に登録してくれた場合などにブレやすい"相対値"なので、僕はほとんど見ません。それよりも「課金ユーザー数(PU)」で見た方が"絶対値"なので、多いか少ないかが分かり易いですし、その値次第でどんな施策を打てば良いのかが考えやすいと思っています。

課金率と同時によく見る値として「ARPPU」 というのがあります。例えば月の売上が5千万円だとして、月の合計課金ユーザー数が1万人だったとします。そうすると「50,000,000÷10,000=5,000」となり、月のARPPUは5千円になります。PUとARPPUを相対的に見ることで、課金ユーザーの体質やサービスの健康状態を見ることができます。

PU多い、ARPPU低い =課金率が高いので、売上が安定しやすい。さらに課金率が安定する、もしくは現状よりもARPPUの上がる施策を考える。

PU少ない、 ARPPU高い =コアなユーザー層が多い。初心者とのゲームバランスが極端に離れている可能性がある。もしくは長期的にサービスを続けているために起きている。PUが増えるための施策を考える。

ざっくりとはこんな風に見ています。また、個人的には「合計PUが何人か」よりも、月の頭から月末にかけて、PUがどのぐらいの速度で増えているかを「積上PU」という形でよく見ます。1日目に100人で、2日目に他のユーザーが50人課金、3日目にまた別のユーザーが70人課金、としたら、3日目の時点での積上PUは220人です。この速度を追うことで、今月の目標売上に対して大丈夫そうかどうかがなんとなく分かるようになります。また、その数値次第で月内に新しい施策を行うかの指標にもまります。 

それと同時に、当日のPUの中に「このゲームに初めて課金したユーザーが何人いるか。」 もよく見ます。今日のPUが100人だとして、そのうち新規PU30人といったふうな感じです。新規PUが少ない=古いユーザーしかいない、または最近ゲームを始めたユーザーは課金をしたいと思っていないというように捉えられるので、改めてゲーム全体を見渡して、新しいユーザーでも課金したいなーと思うようなアイディアを考えることになります。

他にも色々な数値があるのですが、僕は大体↑の値以外は補助的には見るとしても、さして重要視はしていません。端的に言えば「継続率=ユーザーからのゲームの面白さに対する評価」「課金率、ARPPU=ユーザーがお金を払いたいと思う価値があるかどうか」なので、この二つを見ることは、「ユーザー(楽しみたい)」と「会社(売れたい)」 という単位で考えるためには一番シンプルな見方だと思っています。

「課金率高いよねー、低いよねー」とか、どこと比較しての根拠だよみたいな、実際は数字があまりよく分かっていない人や、変にあれこれCPAだのLTVだの色んな数字に踊らされてしまう人がたまーにいますが、頭が良すぎて結局アホじゃん、と静観してます。結局のところ数字というのはユーザーのみなさんがゲームをプレイした時に感じた「気持ち」が「行動」になって、その結果がたまたまログとして残っているだけに過ぎません。意味もなくたくさんの数値を見て「俺、分析してるわー。」と自己満足にひたるよりも、なるべく単純に見た方がゲームの面白さを考えることに集中できるよね、というお話でした。

ゲームプランナー志望ですって言って、ラノベ見ながらシナリオ書きたい(それ以外は興味無い)と思っているようなかたは、ゲームをお仕事にするにはこんなことも必要なんだなーと思ってくれると嬉しいです。かしこ。

Lv.5 企画を”スーパー化”する



スマホとかパソコンの課金型ゲームをお仕事をたくさん経験していると、時々こういうことがあります。

「さて次の大幅アップデート、何を実装しようか?」
「やっぱレイドっしょ。」


僕は正直あんまりこんな感じの会話が好きではありません。色々なタイプのソーシャルゲームをプレイされているかたなら分かると思いますが、フレンドやらギルドやらPvPなんてソーシャル的な要素を、たくさんのゲームで体験すると思います。何故それが入ってるのかと言えば、ユーザー的に言うと「面白いから」、作ってる側からすると「売り上げが立つから」 という単純な話ですし、それ自体を否定することはありません。

僕が嫌だなーと思うのは、KPI考察とかもせずに、なんも考えないで提案しているように思える、もしくは自分が好きなゲームシステムを言いたかっただけのように聞こえる時があるからです。当然本人がそう考えているかはまた別の話ですが、「ちゃんとこのゲームにマッチしているか?より多くのユーザーが求めてくれるか?」ということが、ないがしろにされているように感じてしまうのです。

例えばピースフルな農園系のゲームに、PvP(ユーザー対戦)は合いません。いきなり人の畑に乗り込んで農作物を荒らし、家畜を血祭りにし、納屋を燃やすなんてゲームでは、ぜんぜん農園系っぽくありません。(…でも面白そうですね……)  どう考えてもPvPとかGvGは、RPGや戦争物などの”バトルがある前提のゲーム向き”だということが分かると思います。

じゃあバトル系のゲームだったら入れれば良いのかというと、そうでもありません。一人でまったりするのが好きなユーザーだってたくさんいます。現にメガヒットしたパズドラにはギルドだとかGvGだとか、複雑なしがらみを考慮した要素はほとんどありません。

良いか悪いか、という結論にはまったく興味がありませんが「もし入れるのであれば」、ユーザーが最大限楽しんでくれるように、より工夫をすべきですし「マッチしないようであれば」、入れなければ良いだけだと考えています。

それを前提として「実際に入れることになった」としたら?ここからが個人的には大事だと思っています。先ほどの「ギルド」を入れることになったとしましょう。ざっくり言えばユーザー同士を特定のグループにして、グループの仲間同士で一緒にゲームで盛り上がろうということだと思います。

当然ゲームシステムとして詳細に落としていくためには、ギルドはどうやれば結成できるのか?ギルド結成の条件にレベルなどの制限を設けるのか?ギルドには何人まで参加できるのか?参加するためにはリーダーの許可が必要か?そもそもギルドに参加すると、どんなメリットがあるのか?など、細かい要素をちゃんと考えなければいけません。

まぁそんなのはお仕事なので当たり前として、 ここで言いたいのは「そこらへんで見たシステムをそのまんま持ってきて、ほんとに大丈夫?」と言うことです。あっちのゲームではすごくマッチしているかもしれないけれど、こっちのゲームでは少しアレンジが必要かどうかを、一回ちゃんと考えようということです。

例えば、「ギルドを結成する→レベル20にならないと出来ない」というケース。すでに二つめんどくさいです。自分で結成しなければいけないめんどくささ、レベルを上げないといけないめんどくささ。もっと言えば結成した後は一生懸命他のユーザーを勧誘しなければいけないわけです。勧誘したのに参加してくれない、逆に誰からも勧誘されない。なにそれダセェ、どっちらけじゃないですか!!!

では、そのめんどくささをクリアした形でギルドというゲームシステムを作ることはできるのか?ここを常にちゃんとユーザーに合わせて考えるようにすることが、ゲームプランナーにとって何よりも大切だと思っています。例えば月曜の朝に、ゲームを遊んでいるユーザーの中からランダムに7人組が作られて、今週一週間は仲間としてプレイするという仕組みにしてしまえば、結成とかレベルキャップとか勧誘とか、そんなめんどくさいことはしないで済むわけです。そして一週間経ったたら自動解散、また新たなギルドが自動結成されれば良いのです。(実際にFINAL FANTASY BRIGADEであったシステム)


要するに、「1・何か新しい要素を入れよう!→2・既存のあのシステムが最近流行ってるみたい!→3・ちゃんとこのゲームないし、このゲームのユーザーにマッチさせよう、アレンジしよう!」という「3」の流れを必ずやりましょうね、というお話です。

長々と書いた手前アレですが、僕はこの3のことを「スーパー化」と言っています。フレンド機能ではなく、スーパーフレンド機能!!!ログインボーナスではなく、スーパーログインボーナス!!!ギルドではなく、スーパーギルド!!!決して余計なものを付け足すことを指しているのではなく、「どうすることでよりたくさんのユーザーが魅力的に感じてくれるか?」を考えることが大切です。

この「スーパー」の部分を日々ちゃんと一生懸命考えることで、より良いゲームシステムや、ユーザーにとってより気持ち良い体験に繋がっていくのではと思っていまーす。

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